現代社会で、精神面で半健康状態にある人は非常に多く存在します。
医者にかかってみても、何ともないといわれる、あちこちの内科や精神科、心療内科などを転々としてもいっこうに改善しない。検査結果に異常なしといわれるけれど、自分は体調が思わしくないというパターンです。
このようなケースの場合、漢方の診療で日本人に非常に多い証は肝気鬱という症状です。肝気滞などと表現される場合もありますが、いろいろな原因で肝の血流が悪くなってしまい、そのことが原因で種種の不快症状を引きおこしています。
2番目に多いのが湿熱や脾気虚等という証です。
心の病は原因が複雑なようですが、漢方的に5行論や臓腑弁証法、気血津液、弁証等の診断方法により、西洋医学とは全く違った理論で病因を分析してゆきます。
以下に代表的な症例を掲載しておりますので、処方選択の参考にしてください。 |
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◆心の病 不安な精神状態のときにおすすめする漢方薬
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症状 |
不安感から緊張し、緊張は精神的疲労を悪化させ不安感を助長する。
顔色が悪く疲れやすい。動悸・息切れ・呼吸困難・不整脈などで疲労や不安感が出やすい。 |
病証 |
心肺両虚証 |
処方 |
この症状の主要処方としては、人参養栄湯を用います。
心労で体力不足となることにより、不眠などの症状が追加され、また心労がひどくなるといった、逆循環に陥ってしまった場合良く使用されます。
息切れ・疲労感のほかに、喉や口の乾燥感、眠りが浅い、寝汗、やせる、便が硬く便秘しやすいなどの水分不足の症状が同時に見られる場合は、炙甘草湯等を組み合わせた処方があります。
煎じ薬を選び暖めて朝夕に2回ほどに分けて服用すると良いでしょう。 |
症状 |
不安感や迷いを生じ、なかなか結論を見出せず、くよくよと考える。
疲れやすく、動悸を感じる。寝付きが悪く、夢をよく見て熟睡できない。 |
病証 |
心脾両虚証、心血虚証 |
処方 |
この症状の主要処方としては、帰脾湯を用います。
よだれが知らず知らずにでてしまような方も服用すると良いでしょう。
漢方の作用として、補気健脾、養血安神、の作用があります。 |
症状 |
不安感と恐怖感で自信を失い、用心深く守りに入って閉鎖的になり外との交流を好まなくなる。
冷や汗をかいたり、息切れ・動悸を感じる。
手足が冷え、尿が近くなったりし、活動や運動をしなくなる。 |
病証 |
心腎陽虚証 |
処方 |
この症状の主要処方としては、桂枝加竜骨牡蠣湯を用います。
桂枝加竜骨牡蠣湯は虚弱体質でくよくよしやすく、神経質な性格の人によく使われますが。青年期の、心因性のインポテンツにも使用され良い結果を得ることが多くあります。 |
症状 |
肉体の疲労が精神面の不安定を引き起こす。きちんとしないと気が済まない人が多いため、自分の気持ちに身体がついてこないはがゆさがイライラやめいり・不安・悲しみを誘発する。
疲れやすく、食も細いため太れない。不眠なったり、夢をよく見たりする。
疲労で心の余裕がなくなり、やり場のない怒りやめいり・不安・悲しみを身体の症状としてあらわす。 |
病証 |
脾虚肝乗証と心神惑乱証の合併証 |
処方 |
この症状の主要処方としては、甘麦大棗湯+帰脾湯がよいでしょう。 |
症状 |
几帳面な主義を通そうと固執する気持ちと、確認した結果に安心感を実感できず不安になったり、落着かなかったり、ビクビクしやすい。
気にするあまり不眠になり、冷や汗をかいたり、動悸がしたり、胸苦しくなったりする。 |
病証 |
心肝火旺、脾気虚、痰湿証 |
処方 |
この症状の主要処方としては、柴胡加竜骨牡蠣湯を用います。
この処方は鎮静を目的とした処方です、小柴胡湯という漢方薬に、竜骨、牡蛎、茯苓、桂枝などの生薬を追加して抗精神作用を強くしたものです。 |
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