◆漢方薬酒のすすめ
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薬酒は「未病を治す」(いまだ病まざるを治す)ということを大きな目標として古来から愛用されてきました。
私達は、病気でなければ健康であると考えがちですが、周囲を見回せば、病院で検査をしても異常が認められないのに、倦怠感や憂鬱感、食欲不振などといった症状に悩まされている人を大勢見かけます。
古人はこの半健康、半病人の状態を、「未病」と呼びました。全ての病気はこの状態を通過し、こういう半健康、半病人の状態が長く続くと、いずれ本当の病気になってしまいます。
薬酒は、病気の一歩手前でその芽を解消してしまうことを本領としたものです。
もちろん、病気になってからはじめて服用するケースも多くありますが、アルコールということもあり、病気の種類によっては制限されることがあります。 薬酒は健康なうちから、自分の体質にあった薬酒をみつけて、少量ずつ、毎日継続して服用することが肝心です。 |
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◆薬酒と薬湯の違いは?
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薬湯(煎じ薬)は加熱によって失われる成分がありますが、薬酒は加熱しないため多様な成分がそのまま残ることになります。また、純粋に生薬のみの成分を利用する薬湯と異なり、アルコールの効能が生薬成分の協力によってシャープになります。そのために生薬の成分と異なった効能が生じてきます。
同じ処方でも、薬湯にした場合と薬酒にした場合では効能はかなり違ったものになります。
薬酒は長年の経験に培われた法則に従って作るのが有効であるゆえんです。 |
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◆薬酒ならではのアルコールの効能
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成分中にしめるアルコールの量が多いだけに、薬酒の効能の中でアルコールの薬理効果は大きいものがあります。
(1)消化を助け、食欲増進する。
(2)血液の循環をよくして体を温める。
(3)眠りを助ける。
(4)大脳皮質にはたらきストレス解消に役立つ。
(5)血中の善玉コレステロールを増加する。
以上に加えて生薬の効能が、渾然一体となっているのが薬酒といえましょう。 |
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◆薬酒と体質の関係
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漢方では、その人の体質を”寒”と”温”という考え方で分類します。
”寒”の体質は温め、”温”の体質は冷ます方向にもっていくと体質が改善されます。
薬酒は一般に体を温める補養薬が多く用いられ、漢方でいう薬性ではおもに体を温める「温」か、中間の「平」の生薬を用いるのが適しています。 |
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◆薬酒に向く人、向かない人
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薬酒は半健康状態の、血液循環不良、虚弱体質、体力低下、老化など、体力を補い新陳代謝を高め、免疫力を強めたい人に向きます。ただし、アルコールの効能上飲まないほうがよい人がいます。
それは、病勢が激しく活動中で、熱が出て、機能が興奮状態にある場合です。
たとえば、出血性疾患、炎症性疾患、呼吸器疾患などで、気管支炎、肝炎、カイヨウ、肺結核、口内炎、高血圧症、各種ガン疾患などがそれに含まれます。 |
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◆薬酒一種のみで作る方法と数種で作る方法
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一種類の生薬を酒に漬けたものを単方といいます。
効きめが比較的シャープなので、単純な症状で効果を一点に絞りたいときに用いることが多く、短期間で早く効果が現れます。
二種類以上の生薬を漬けたものは複方といいます。
複数の生薬で全身のバランスをよくしていくものが多く、症状が複雑で慢性的、体質的な傾向をもつのに向いています。長期的にじっくり効果を現します。
また、薬酒の場合、漬ける生薬の量が多いほうが効きめがあるような気がするかもしれませんが、成分が多様で作用がシャープですから濃厚なものはかえってよくありません。 |
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◆「毎日少しずつ」が飲み方の基本
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アルコールを大量に飲み続けるのが体によくないことは周知のとおりです。
薬酒も同じアルコールですから、適量を守ってこそ絶大な効果があります。標準は一日40〜100ml。
これを二〜三回に分けて食前か、食間(食事の二〜三時間後)に飲みます。 |
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◆おいしく飲むための方法あれこれ
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薬酒は本来、味よりも効能本位に作られたものなので味のよいものばかりではありません。
しかし、毎日続けて飲むものですから、おいしいに越したことはありません。
いちばん簡単な方法は甘味料を入れること。グラニュー糖やはちみつなど、生薬の味に合うものを選びます。好みですが、基本的には刺激的な味にはまろやかな甘みを加えるとよいでしょう。
漬け込み用のホワイトリカーの代わりに香りのあるブランデーを使ったり、また飲むときにワイン、リキュール、ジュースなどを加えても結構です。
熟成がすんで服用可能になった薬酒を、ご自分の好みの味に変えて一番の見やすい形を探すのも楽しみな事です。 |
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