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◆ステロイド外用薬長期使用過多による重度の手掌紅斑・角質落屑

30歳代女性 ステロイド外用薬長期使用過多による重度の手掌紅斑・角質落屑 皮膚-09

◆症状と経過

30歳代女性 、10年以上前から手の主婦湿疹治療で皮膚科や内科に通院していた。
医院からはデルモベートやトプシムなどといった強いステロイド外用剤が継続して大量に投薬されていた模様で、外用薬を使用すると痒みがすぐとれるのでハンドクリームのように毎日寝る前や日中に使用していたとのこと。
手掌紅斑がひどく、初診時に両手の平は真っ赤に腫れており角質が乾いてポロポロとはがれてくる状況、皮膚は薄く内部は鬱血しているため手を握ることができず夜間は痛みで全く眠れないとのこと。
みるからにひどい状況で手掌は皮膚組織そのものがワックスのようになってしまい(蝋人形のような皮膚)組織や毛細血管がないのでないかとおもうくらいで、手袋をしているが日常の生活にも支障が出ている。
お薬の服用歴は、病院で温経湯や温清飲を長期に処方されたことがあるが全く効果が出なかったとのこと、相談時も手袋をしていないと痛みが出ている。
体質は暑がりで夏が嫌い、便通は三日に1回くらいで便が結しやすい、尿量は普通、回数は1日3〜5回程度、汗をよくかく、強い生理不順があり20日ほど生理がこないこともある、遅れがち。生理の前になるといらいらする。夜間は手掌のみではなく体全部が熱いときもある。舌診では舌全体がやや暗赤色で舌の先端に赤みが強くあり、サイドに歯形が残っておりやや胖大。など問診から総合して基本的な体質は熱証と判断するが、脾気虚や舌の色からの血於、腎陰虚による虚熱なども考えられる。

◆使用処方と考察

この症例は手掌の症状がなければいたって健康(本人曰く)ということで、手の湿疹ができたときの外用剤の使用方法さえ間違わなければ、このようにひどくはならなかったはずで、ここまで症状が進んでしまうと治癒までに結構時間がかかることが予想された。
漢方からみた体質がもともと、熱証で血?があるからこのように手の症状がひどくなったと思われるが、外用薬の作用で手掌の血流が滞ってしまい結果としてそのことが引き金となりもとの体質の悪い面がより強く引き出されるようになったともいえる。
治療は、血?と便通を正常にすることからはじめ、当初、血府逐於湯に大黄を加味して服用していただいた。
約3ヶ月の服用で舌診から見て取れる青舌や暗赤色がなくなり、生理も大きく遅れるということがなくなり、血?の状況は短期に解消したようにとれたが手掌の状況はいっこうに変わらず、硼砂グリセリン液でもひび割れから痛みが出てしまい、非ステロイド剤外用には全く反応せず、ヒルドイドやアズノール軟膏ではさらに悪化。
紫雲膏、タイツコウいずれも無効、傷がしみて痛いためかろうじて病院で出されたゲンタシン軟膏の外用でしのいでいる状況であった。
指の皮膚組織そのものがダメージを受けているような感じが強く、生理の前のイライラや疲れる、貧血気味、むくみなどの症状もでているため、少し遠回りになるが体力を補い脾虚を補うための六君子湯と加味逍遥散の合方に変更して様子を見ることにした、3ヶ月ほどで手掌に変化が現れ手首から親指の付け根のふくらみのあたりまで正常な皮膚の状態に近づいて、夜間のほてりや痛みがなくなってきたとのこと。ただ手掌の赤みが、いっこうにとれず、3ヶ月の服用期間を過ぎて季節が夏から冬に変わった時点で、残念なことにまた以前のように指がカサカサになり皮膚の角質の落屑、ほてり、痛みなどが出ている。この時点での舌診では正常舌と判断でき、生理も順調となっていることから全身症状は血?が解消され総じて以前より良くなっているという印象がある。
愁訴は初診の時に比べて症状がより絞られてきており、寒くなると同時に体のほてりが出て、夜間寝ているときに1回必ず水を飲む、手だけでなく足がほてるなど陰虚の症状を訴えるようになったため、3回目の処方変更を行った。
処方は、杞菊六味丸加桃仁鬱金で、肝腎陰虚ととれる体調に対応したもの。六味丸部分はメーカー製造の丸剤を利用して枸杞子、菊花、桃仁、鬱金4味は煎じ薬とし併せて服用していただいた。杞菊六味丸を煎じとしなかった理由は六味丸の煎じは非常に酸っぱくて、女性ということもあり長期服用も考えて、六味丸部分は丸剤でお出しすることとした。
2ヶ月継続して服用していただいた時点で、体全体のほてりが少なくなると同時に手掌の赤み、痛みが減少している。手指の組織も外観から見て通常の組織に近くなり異常な赤み角質の増殖は初診の時に比べ大きく改善してきている。現在継続して服用中。

手の皮膚が薄くなり、両手掌の母指球や小指球が発赤しているものを中医では総称して「朱砂掌」と表現しているが、体質で?血が絡んでおり肝腎陰虚などが影響していると長期化してしまうことがよくある。慢性の炎症疾患が続き消耗が腎に及んで腎精の不足をきたし肝も補いきれずに肝腎陰虚となり内熱が発生しその熱により手掌の紅斑が余計ひどくなる。肝腎陰虚が強ければ滋養→肝心陰血を主目的に六味丸関連の処方が推奨される。
血?がもっと強ければ膈下逐?湯なども使用も考慮できるが、このケースの場合当初に血府逐?湯にて血?が相当改善されており2回目の処方で肝気欝滞や肝胆湿熱などの疏泄の障害が解決されているので補腎活血などに専念する意味で上記処方を選択して良好な結果を得ている。

このように病因が特殊な外因(ステロイド外用剤)の場合、(外用薬の副作用を外因ととらえるかはどうも不明ですが)患者様本来の内因や季節などが複雑に絡んでいることが多く清熱剤の温清飲などの単一処方で簡単に解決できないことが多い、病因と病期の考え方をきちんとしていかないといけない例でもある。


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