◆期外収縮があり、通院中に併用可能な漢方薬を希望
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60歳代女性 |
心室性の期外収縮が頻繁に起こり心配。 |
循環-01 |
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◆症状と経過
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主訴 期外収縮。昨年11月ころから。
年末に特に悪化した。循環器内科よりビソプロロール錠5mgが処方されている。
ホルター心電図で特に異常は指摘されなかった。
医師から特に薬の追加は心配ないと言われているが症状が時々出現して気になるので、自分で漢方薬を買って飲むが効果は感じられない。
これまでに購入した漢方として、
動悸に対して 苓桂朮甘湯。
痰がらみに対して 桂枝加竜骨牡蠣湯、頭痛にイブを服用。
へその辺りから突き上げるような動悸(奔豚気のようなものがある)。
しばしば夜中に目が覚める。朝起きた時に疲れがとれていない。
母の介護があり安心して眠れない。
排便は毎日あるが、やや軟便傾向。食欲はある。目の乾きなし。口の乾き無し。
痰がからむのがとくにかく気になる。
舌診:紅舌、薄苔、舌下静脈の怒張なし |
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◆使用処方と考察
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漢方診断では、
1.心血虚がある。
心陰が減少し相対的に心陽が亢進することで、動悸や不眠が起こりやすくなる。
2.痰飲がある。
しつこい痰がからむことが多い。
3.虚煩、胸部がざわざわして落ち着かない不安感、の症状が特徴的。
高齢の母親の介護に対する不安が強いと考えられる。
へそのあたりから突き上げるように動悸がするというのは奔豚気と考えたが、苓桂朮甘湯が無効のため今回は考慮しなかった。
処方は加味温胆湯を選択し良好な結果が出ている。
加味温胆湯について、処方構成は半夏、陳皮、茯苓、生姜、甘草、竹茹、枳実、酸棗仁、玄参、遠志、人参、地黄、大棗であり、多くの生薬が使用されている。
その中で、半夏、陳皮、茯苓、生姜、甘草は二陳湯であり化痰薬であり痰を取り除く作用がある。
酸棗仁、遠志は心血を補い安神する。
煎じ薬のアルミパック包装の形で投薬、1か月後に、本人の自覚としてはっきり動悸の頻度減少を感じたとのこと。
煎じ薬の味も無理なく服用でき、漢方を飲み始めて2週間くらいから効果が実感できいる模様。
さらに30日分継続中、完全に自覚症状としての期外収縮が止まるまで服用を勧める。
期外収縮は特に心配のない症状として知られているが、その原因は多岐にわたり、ストレスや多量の飲酒、睡眠不足、肉体疲労などで誘発され、日常よく見られる症状である。
一番の治療は不安やストレス、睡眠不足などを改善して、あまり気にしないことも大事である。そのことは患者さんも医師より説明され十分承知しているが、人によっては不安が重なり神経がより過敏になることも、日常よく見られる症状である。
体質に合わせた漢方薬で、症状の改善をはかることがほとんどの場合で可能なため、体質の漢方的な診断がより重要となってくる。 |
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