◆過敏性腸症候群と診断されて通院中、職場の環境で下腹部の鈍痛が1日中続く
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10歳代女性 |
過敏性腸症候群と診断されて通院中、職場の環境で下腹部の鈍痛が1日中続く。 |
胃腸-03 |
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◆症状と経過
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昨春に新卒で会社に入社し、事務の仕事に就く。
1年ほど経過して仕事にも慣れてきた頃から下腹部痛が出るようになった。
婦人科や内科など回ってきたが何処も異常はないと説明され、軽い安定剤などを服用したこともある。
痛み(下腹部痛)は朝起きるとすぐに始まり、特に左下腹部、1日中痛い、会社の上司との折り合いが悪く、上司のことは嫌いである、上司の態度がきついためいつも不安を感じている、会社の空調が強く、冬は暖かすぎて夏は冷房が効きすぎて寒すぎる環境、いすに座っていると締め付けられるような痛みがあり、我慢できないときが多い。
体質は便秘気味で便通があるときは軟便、寒がりで暑がり、夏は嫌い、学生の頃は汗を良くかく体質、尿の回数も多い、生理不順はない、生理の周期にあわせて病状が変化すると言うことはない、とにかく上司が嫌い、怖いという状況。
休日などは、時々痛みを感じないときがある、お母さんとご一緒に相談にみえる。 |
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◆使用処方と考察
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このケースは、患者が婦人科に通院した経験があり婦人病については全く異常がないとのお話を信じてしまい、当初肝気鬱の治療をしてしまい治療期間が長くなってしまった。いわいる直感的にストレス性の腹痛かなと判断し、柴胡剤に走ってしまったことである。
また過敏性腸症候群という本人の申告病名に集中してしまい桂枝加芍薬湯などと、いわゆる結果的に的はずれな薬を投薬してしまったことにも大いに反省点がある。
これらの処方は、投薬当初ブラシーボ効果も働くせいか、少し症状が改善したようにとれたが、やはり腹痛がすぐに再発してしまっていた、もう少し冷静に対応していれば治療期間が短縮できたのではないかと思う。
3回の処方変更の末やっと快方に向かった。
最終処方は、人参養栄湯合牛膝散で延胡索と木香を加味したもの、舌診で舌裏静脈の怒張は全く確認されないが、左下腹部の固定痛に対しヲ血と判断し、牛膝散加延胡索、木香、また精神状態が不安定になりやすく朝の寝起きは体調が良くない等、体力もないことから安神効果のある人参養栄湯を選択し、合方で投薬し、約1ヶ月後次第に痛みが引けてくるようになり、快方に向かった。
現在同処方を継続中、牛膝散に加味した延胡索、木香はお腹の痛み止めの効果を期待して追加したもの。
過敏性腸症候群にたいして、常用処方を当薬局のホームページで紹介しているが、病態が様々で個々の患者にあわせて対応した場合処方は無限に近くなってくる。
それだけ患者にとっては症状の改善が期待できると言うことであり、逆に言えばこちらの力量を試される場合でもあるといえる、今回は問診でチェックすることのできなかったヲ血を補剤とともに治療することにより先が見えてきた、通ぜざるは痛む。
また、なかなか完全に回復しないのに当薬局を信じて通い詰めてこられた患者さんに感謝したい。 |
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