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◆夜尿症 5歳の時からほとんど毎日、現在中学生

10歳代女性 夜尿症 5歳の時からほとんど毎日、現在中学生 泌尿-02

◆症状と経過

表題どおり女児で13歳。5歳の時から夜尿症となり母子とも心労が絶えないとのこと。
幼稚園小学校ともほとんど毎日お漏らしとなってしまう、中学になり少しよくなったなった感じがあるというが、大丈夫な日は週に1〜2回程度。小学校の時まだ学校の行事(旅行など)がないから良かったが中学になり修学旅行や合宿などで外泊する機会が多くなりそのときのことを非常に心配されている。

複数の病院にも通ったとのことで、何種類かの投薬(漢方を含めて)を受けたがほとんど回復しなかった、漢方は顆粒のものを勧められたが薬名は不明。とにかくいろんな薬を服用した。夜間、床について2時間以内に失敗することが多く、朝方の失敗は少ない。夜尿をするときの意識はあまりなく、ぐっすりと眠っていることが多い。
友達も多く元気なほうである、部活は体育系に属しており毎日部活(体操)をして帰るが、運動過剰ということはないとのことで本人は外見上は元気。母親のお話からは性格は優しい性格でおとなしい方だとのこと。
体格は平均より小さく、やせ形で一見小学校の4年くらいかな?と疑うくらいに小振りである。もうすこし身長も伸びてくれればよいがと希望されている。

最近は、毎日カレンダーで失敗した日にちに、丸印をつけるなどして管理している。
初回の相談の歳にカレンダーに毎日○×が記入されているものを持参された。
舌診は通常舌で特に異常は見られない。

◆使用処方と考察

幼児の時から継続して夜尿症が治らなく、通院をしていたが良い結果とは為らず中学生までその症状を持ち越してしまった例で、面談から何種類かの漢方薬を病院にて試しているがうまくいっていない。
本人の体質も、もちろんあるが生育環境や両親の子供への接し方など日常の生活にての原因も多少あるかなと考えられるケースである。

お薬よりも先に、まず毎日記録している夜尿症カレンダーなるものの記入を今後は絶対にしないようにお母さんにお願いした。本人も知らず知らずにカレンダーに記入しているとのことであまりに神経質になることはよくないので了解していただいた。
夜尿症の相談にこられる方の多くが、大なり小なりカレンダーなどを利用して、よかった日悪かった日、その状況などをチェックしているがこれは子供や親の心理的負担を増やすのみでほとんどよい結果につながらないのでやめてもらっている。(相談者の多くは病院などを転々としてなかなかよくならないと、現状を医師に伝えたいため夜尿症カレンダーなるものを作ってしまうことが多い)

処方は体格が小さいことや、昼間でもよく水分をほしがることや年齢などから六味丸をベースの処方とし丸剤を煎じ薬と一緒に服用していただくことにした、六味丸はウチダの丸剤を選択、一日40丸を分2。プラスする煎じ薬は越脾加朮湯とし、こちらも1日2回六味丸と同時に服用していただいた。

1ヵ月後に再度来店され、漢方薬を飲み始めた最初のころはすごくよく効いたようでほとんど失敗する日がなくなったとのこと、ただ、2週間ほど経過して安心していたらまた以前のように失敗する日が出てきてしまったとのこと。2回目の相談で漢方は同処方を追加し市販のマルチビタミンと反鼻末を追加する。食事などは十分にとれており栄養不足などは考えられないとのことでしたがこのようなケースの場合(成長が少し物足りない)なにか栄養剤を追加するとよい結果になることが多い。コウジン末などもこのような難治の場合は使用してみてもよいと考えるが今回は補陽よりも補陰を中心にしたいため反鼻末を選んだ。

3ヵ月後に来店され、症状は以前に比べて格段によくなっているが、やはりよい時期と悪い時期が10日くらいの周期で繰り返してしまうとのこと。その辺の状況をもう少し詳しく子供さんに質問してみると、学校での人間関係にすこし不安があるようで(すごくきらいな先生や友達がいる)処方を越脾加朮湯からサイコケイシトウに変更して継続服用をお願いした。13歳ということもあり生理の状況は今回は不問、血虚のような状況は認められなかった。

最初の相談から6ヵ月後の来店で、気になる症状(周期的によくなったりわるくなったり)が消失して1ヶ月ほどになるとのこと、サイコケイシトウは2週間程度の服用で治ってきたので服用ていないとのこと(余っている)服用しているのはマムシの粉とマルチビタミンのみで継続しておりそれを飲みきった状態で終了とした。
マルチビタミンは本人も気に入っているようなので現在も継続して服用している。

このケースは服薬終了まで約7ヶ月とずいぶん時間がかかったが、いろんな薬を効果が出ないからと少しずつ飲んでいたためお薬に対して本人とお母さん両方に不信感があり最初の一発目で何か結果を出さないと、またくすりを中止されてしまうのではないかと、相談されるほうも結構プレッシャーがあった。幸いマオウを中心とする方剤と六味丸が効いてくれて初期のうちに効果を患者様のほうで確認できたので最後まで継続した例である。サイコケイシトウは小中学生の登校拒否や閉じこもりにも当薬局ではよく使用する処方。

夜尿症に対してマオウ製剤は結構使いやすく、一見難しいと思われるパターンでも一度チャレンジしてみるべき処方です。

当薬局では、夜尿症は基本的に3パターン分類して対応している。
ただ子供の体質をたった1回の面談でわかろうとするのも多少の不安点があり、そのうえ子供の場合は複雑に原因が絡んでおり「これだ」という方向がしっかり見えないことが非常に多いというのが通常です。
必然的に合方が多くなり、また栄養剤なども使うケースが多くでてきています。

当薬局での3パターン。(複数パターンが絡んでいるケースがほとんど)
A:排尿調節機能の発達が少し遅れており、子供の成長を積極的に促すことによって回復が予想されるパターン。
B:排尿調節機能の発達の遅れははっきりと確認できないが、心因的なストレスが主な原因となっているパターン。
C:漢方的に、子供の状況から気虚、血虚、湿熱などの病因(内因、外因、臓腑)がはっきりと確認できるパターン。
(ABパターンにもかかりますが特に陽虚からくる「冷え症」などの明らかな特徴を持つことが多い)

Aパターンについて。
候補処方は、補中益気湯(サンギトウ)、六味丸、八珍湯、麻杏甘石湯、麻黄湯:麻黄、越婢加朮湯、などがあり、ますが、成長がおそく体格、骨やつめが弱いなどがある場合は六味丸ベースの方剤が推奨となります、マオウ製剤(越婢加朮湯など)は頭をはっきりさせ、中枢の反射などにも良い影響が考えられます。筋力が弱い、遠足などに出れない、体育がにがてなどはに黄耆を中心とした方剤が適し補中益気湯などが推奨されます。当然のように合方が多くなります。

Bパターンについて。
候補処方は、小建中湯、柴胡桂枝湯などがあり、性格が弱く、よく腹痛をおこす、精神的に緊張しやすい、床に就くとすぐにおねしょになってしまう、夜間に何回も失敗するというような症状があれば推奨されます。
小建中湯は過緊張型に、柴胡桂枝湯はイライラや抑うつ型に使用すると良いでしょう。

Cパターンについて。
候補処方は、理中湯、苓姜朮甘湯など、朝方の寒い時間帯におもらしが続く、夏はさほでもない。冬になると毎年夜尿症で悩む、などの場合は、暖める効果の強い人参や生姜を中心とした処方が推奨されます。あるいは単純に紅参末などを一ヶ月ほど常用させてもお客様にとっては煎じ薬より安価でよい結果になる場合が多くあります。

以上が当薬局での夜尿症に対する基本的な考え方ですが、病因が複雑なため単一の処方ではなく、小刻みに対応するか、複数の組み合わせ処方が推奨されます。


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