◆若い頃から治らない慢性の尋常性乾癬(自己判断による)
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40歳代女性 |
若い頃から治らない慢性の尋常性乾癬(自己判断による) |
皮膚-13 |
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尋常性乾癬はこんな病気
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尋常性乾癬とは、皮膚に紅斑(血管拡張や充血が真皮内に起こり赤くなった状態)ができ、次第にその表面が銀白色の細かいかさぶたで覆われ、やがてそれがフケのようにボロボロとはがれる皮膚の病気です。
炎症性角化症の代表的な病気が乾癬(かんせん)であり、その症状によって5つのタイプ(尋常性乾癬、関節性乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、乾癬性紅皮症)に分けることができます。最も多いタイプがここで述べる尋常性乾癬です。
日本の乾癬患者数は10万〜20万人と推計されており、欧米の10分の1程度です。男性のほうが女性より多いといわれ、好発年齢は男性が30代〜40代、女性が20代です。
乾癬の原因は解明されていませんが、細菌やウイルスによって起きる病気ではないので、ほかの人に感染する心配はありません。 |
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尋常性乾癬の症状
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皮膚にできた紅斑や発疹が乾燥し、角質がはがれ落ちます。正常な皮膚との境界がはっきりしているという特徴もあります。また、健康な皮膚でも掻いたりすると刺激によって尋常性乾癬と同じような症状が現れます。
本来、健康な皮膚は表皮細胞が生まれてからはがれるまでの工程を28日周期で繰り返しています。これに対して、尋常性乾癬の皮膚では表皮細胞の異常な増殖が起き、健康な皮膚に比べて10倍以上の速度で表皮が作られます。そして、過剰に作られた表皮は積み重なって、やがてはがれ落ちていきます。また、炎症性の細胞が集まってきて活性化するため、毛細血管が拡張して赤みを帯びたようになります。 |
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尋常性乾癬の治療法
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基本は、ステロイド剤やビタミンD誘導体の外用薬で治療します。
難治な場合は、紫外線療法または、ビタミンA誘導体や免疫抑制剤による内服療法、最先端のバイオ技術によって生み出された生物学的製剤による治療法も注目されています。 |
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◆症状と経過
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ご本人は尋常性乾癬が治癒しないと訴えてご来店。
初発は18歳ころ、襟足に湿疹がある。40歳の時に 一人目の出産をし、その後悪化した。
皮膚科でステロイド処方されるが、中止の際ステロイド離脱でさらに悪化した経験があり。
ステロイドは使いたくないと考えるようになる。44歳に二人目出産し再度悪化した。
症状の部位、すね:かゆみ、紅斑、肘:苔癬化、痛み、指関節:苔癬化。
苔癬化している部位、紅斑の範囲は広くない。
かゆみが強く眠れないことがある。
そのほかの症状として、最近月経痛が強くなった。月経前にかゆみが強くなる。不整脈がある。
(治療の必要なしと医師から診断を受けている,) 目の疲れ、かすみ、皮膚乾燥が強い、生理前にめまい、股関節が痛い。 |
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◆使用処方と考察
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いずれの場合も、産後に症状が悪化していることから、出産が大きなきっかけとなっており、一般に血虚、血於の体質がベースにある方で、さらにストレスが重なるとこのような皮膚症状となって出現することが多くある。
体質の判断、このケースの場合も
1.血虚があり。皮膚症状の悪化因子⇒出産 出産の度に悪化している!
出産は大量の血液を消耗するため。
目の疲れ、かすみ、皮膚の乾燥など陰血の不足に当てはまる症状がある。
2.血於について、皮膚の苔癬化、硬くなっている部位は於血であると考える。月経痛も於血が関与している場合がある。 3.実熱の存在:強いかゆみ、赤くなった皮疹は実熱のためと考える。
出産後の血虚、血於に対する処方として、キョウ帰調血飲第一加減の内服が推奨される。
また実熱に対する処方として、黄連解毒湯を選択した。
以上のことから、
キュウ帰調血飲第一加減合黄連解毒湯を処方した。 経過
R4.12.:
襟足がかゆくなっても翌日には治まるようになった。
乾癬は前より薄くなった。さらに30日分Do処方
R5.1.:
漢方薬を開始して2回月経あり、月経痛が強く、経血量が多い。
婦人科系の疾患が心配。血に関する漢方を止めてみて改善するかどうか試したいと申し出あり。キュウ帰調血飲第一加減は中止
苔癬化した部位はだいぶ薄くなっている。かゆみはまだ残っているとのこと。
現在ウチダ 黄連解毒丸のみ継続中。
この方に限らず、一般的な推奨処方としては、柴胡清肝散なども体質改善として当薬局ではよく使用している。。 |
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