◆脱毛症。一ヶ月前より急に頭髪が抜けてきた
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40歳代女性 |
脱毛症。一ヶ月前より急に頭髪が抜けてきた。 |
皮膚-10 |
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◆症状と経過
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40歳代の女性で一ヶ月前より急に頭髪が抜けてきた。
すぐに皮膚科にかかり、円形脱毛症のための内服薬を飲んでいたが、あまり、症状改善していないので漢方薬を始めてみたいとのこと。原因は特に思い当たることはないとのことだったが、2ヶ月ほど前には仕事が忙しく、ストレスもあり体が休まることもなく、疲れがたまっていた。
来局時の体調は食欲もあり食事は普通に食べられる。便秘はあり食べ物によるが1日おき。
顔や手足の冷えや火照りもない。汗はかきやすい。血虚あり、於血はない。舌苔白く薄い。舌先は紅。 |
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◆使用処方と考察
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この患者さんは、頭髪が限局的に脱毛する、疲れやすく声に力が無い、舌質は淡、舌苔は少ない等の気血両虚の特徴もあわせてみられた例。脱毛が最初に見られたころの環境としては、職場でのストレスが強くあったとのことで、仕事上の精神的ストレスにより心神が攪乱され心火が盛んとなって脱毛の原因となる血熱生風が生じ、結果として脱髪を生じたと判断し治療を進めてみた。
処方として疎肝健脾・和血調経・瀉火を目的に加味逍遥散。そして髪、頭皮の栄養として血虚を補うため、補血調血の効果の四物湯を合方とした。
外用薬としては女性ホルモンを含んだ、ハツモール外用薬と、内服でビタミンEを併用していただいた。
漢方服用開始から1カ月経過したころから、脱毛部分から産毛が生え始めて、3カ月後にはほとんど目立たなくなっている。治療中の処方の変更はなし。
ただ漢方服用中にも他の部分でごく小さな脱毛が見られたので、精神的にもまだストレスをためやすい状況が継続していることが考え、さらに3ヶ月のdo処方をお願いしてほとんど完治に至っている。
脱毛の中医弁証としては、以下の4パターンが代表的であり、
(1)突然に脱毛が限局的に発生し特徴的な全身症状はないけれど、イライラや便秘の症状がみられる血熱生風ととれる脱髪。
(2)頭髪は脂性で光沢があり落屑が多く持続的に脱毛し痒い、腰や下肢がだるく無力の症状のみられる陰血虚損の脱髪。
(3)頭髪が細くて乾燥してつやがなく全体的にうすい、息切れ、無力感のみられる気血両虚の脱髪。
(4)1から3の明らかな病因が推定できなく、(血熱、陰虚、気血両虚などに該当しないもの)、脱毛が長期間で各種の治療で効果が無いものがあげられます。
特に(4)はどの分類にも属しませんが当薬局では通常最初に於血の治療を優先して行っています。
以上のように突然の脱毛に関しては、証をきちんとあわせて処方を選ぶことにより比較的短期に改善に向かうことが多くあります。
また皮脂腺説による男性ホルモンの過剰などの場合もあり、適当な外用薬併用とホルモンのバランスをビタミンE内服などによりとることも大事なことと考えます。 |
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