■ハトムギ(ほもの科)
 漢名を「ヨクイ」、その種子を「ヨクイニン」という。山野、川辺などに自生するのはジュズダマで、これは「センコク」という。ハトムギは一年生で、諸所に栽培される。茎の高さ一〜一.五mに生育、葉は麦の葉に似て幅が広い。花は穂状で、夏秋の頃梢上または葉腋から出る。ホウロー質(セトモノのような)だえん形の葉鞘に包まれている(一般の植物では葉柄の基部に葉鞘がある。ハトムギ、ジュズダマの類ではこの葉鞘がホウロー質だえん形のものに変化しているのである)。雌雄異花で、雄花はホウロー質、葉鞘の外に現れ、雌花は中に隠れている。ハトムギの種子はだえん形で果皮がうすく、乾燥すると茶褐色を呈し、手指でも破砕することができる。ジュズダマの種子は前者よりも大きく、その種子の外殻が堅く、乾かしたものは白く、スベスベしていて砕けにくい。割合に中の澱粉質が少ない。まん中に穴をあけて珠子にして子供がもてあそぶ。

「薬用部と利用法」
 ヨクイニンは虚弱体質の栄養剤とし、肺病の人など常用するとよい。皮つきのものもよし。イボ(とくに水疣)取りに特効あり、一日一〇〜一五g煎じてのむ。一ヶ月も連続すると身体各所にできているイボが綺麗に解消する。戦時中、米の配給を増す運動のために全国農村に種子を配給したこともある。オートミールのように食べられる。漢方では盲腸炎、リュウマチ、神経痛の薬の中に配合される。蛋白、脂肪ともに普通の米より含量がはるかに多い。日常、茶代としてハトムギ茶を飲み、無病息災の資料としたい。

「附」
 ヒエ 漢名、?。稲の出来ない山間の暖地で栽培するものと、寒地で同じく稲の出来ない地方に植えるものとの二種あり。八、九月頃穂を出すが芒のないのと、有るのがある。花は淡緑褐色、芒は褐色、果実は黄色の小粒。果実茎葉を煎じて、うるしかぶれに洗うとよい。果実は米と同様食料になる。